建物の解体の際、切り離せないのが「アスベスト(⽯綿)」の問題です。
現在では有害物質として知られ、アスベストを含む建材の使⽤は禁⽌されていますが、2006年以前に建てられた建物にはアスベスト含有建材が使われている可能性があります。
では、アスベストとは⼀体何なのでしょうか?ここではアスベストの基礎知識について解説します。

1.アスベストとは
アスベストは、天然の繊維状ケイ酸塩鉱物で「⽯綿(いしわた、せきめん)」とも呼ばれています。
⽐較的安価であり、保温性や断熱性、吸⾳性など数々の優れた性質を持つことから、戦後の⾼度経済成⻑期には建築物や製品などに広く使われていました。
しかし1970年代に⼊り、アスベストを吸⼊すると発がん性などの健康被害を引き起こす恐れがあることが判明しました。
⽇本では1975年から段階的に使⽤が禁⽌され、2006年には全⾯的に使⽤が禁⽌されています。
2.アスベストの危険性
アスベストの繊維は、⾮常に細かく空気中に浮遊しやすいため、⾶散すると呼吸により肺に吸い込まれてしまいます。
肺に⼊ったアスベストは、除去されずに肺の中に⻑く留まり、肺がんや悪性腫瘍、⽯綿肺などを発症する可能性があります。
これらの健康被害は、10〜40年という⻑い潜伏期間を経て発症します。そのため、アスベストは「サイレントキラー(静かな時限爆弾)」とも呼ばれています。
3.⼾建住宅にも使⽤されていたアスベスト
2006年の労働安全衛⽣法施⾏令の改正により、⼀部の猶予を除き、アスベスト含有建材が全⾯的に使⽤禁⽌となりました。
これはつまり、2006年以前に建てられ建物には、アスベスト含有建材が使われてるかもしれない」ということになります。
⼀般的な⽊造⼾建住宅についても同様です。
ここで覚えておきたい重要なことは、「アスベスト含有建材が使⽤された家に住んでいるだけでは、健康被害にあう可能性は極めて低い」ということです。
アスベストが含まれた建材は、基本的にはその中に繊維が封じ込められているため、劣化や解体でもしない限り「アスベストが⾶散するリスクは低い」と考えられています。
4.アスベストが使われてるかどうか⾒分ける⽅法
アスベスト含有建材が使われているかを⾒分ける⽅法の1つが、建築年です。
前述のとおり、2007年以降に建った住宅であれば、まず⼼配ありません。
2006年以前に建った住宅について、アスベスト含有建材が使われているか調べるには以下の⽅法があります。
アスベストの⾒分け⽅(2006年9⽉以前に建てられた建物の場合)
- 設計図書(施⼯図、仕様書、材料表)などを確認する
- ⽯綿含有建材データベースで調べる
- ⽬視で建材メーカーや製品名、アスベストマークの表⽰を確認する
正式な調査は有資格者に依頼する必要がありますが、アスベストの⾒分け⽅の参考にしてください。
5.アスベストの危険レベル
アスベストが⾶散すると、作業員や近隣住⺠の健康に影響がでる恐れがあります。
これを防ぐため、国⼟交通省ではアスベスト⾶散の危険性に合わせてレベルを定めています。
アスベスト含有建材の発じん性(⾶散性)を基準に、レベル1〜3に分けられており、数字が⼩さいほど危険性が⾼くなります。
建物の解体作業を⾏う際は、これらのレベルに応じた⾶散防⽌策を講じる必要があります。
レベル1:著しく発じん性が⾼い
最も危険な分類で、アスベスト繊維が⾶び散りやすい綿状の材料が該当します。
防⽕材や外壁の仕上げ塗材など、吹き付け材などです。
少しの振動や接触でも⾶散する恐れがあるうえ、アスベスト濃度も⾼く、⾮常に危険です。特に1956年から1975年初頭に建てられた集合住宅やビルなどでよく使⽤されていていました。
なお、⼀般的な住宅では、レベル1の素材が使⽤されることはほとんどありません。
- 主な建材:⽯綿含有吹付け材
- 主な使⽤箇所:耐⽕建築物の梁や柱、エレベーター周辺、機械室やボイラー室の天井‧壁など
レベル2:発じん性が⾼い
保温材や断熱材、耐⽕被覆材などが該当します。
レベル2のアスベストは密度が低いため、崩れてしまうと⼀気に⾶散する可能性が⾼くなります。
レベル1に⽐べると発じん性は低いですが、撤去作業時にはレベル1に準ずる厳しいばく露対策が必要です。レベル2の建材は、2004年頃まで使⽤されています。
- 主な建材:⽯綿含有保温材、耐⽕被覆材断熱材
- 主な使⽤箇所:ボイラー本体や配管、空調ダクト、建築物の柱や梁など
レベル3:発じん性が⽐較的低い
スレートやビニル床タイルなど、主に成形板の建材が対象となります。
⽐較的発じん性が低いため、低リスクでの取り外しが可能です。
セメントや樹脂で固められているので⾶散しにくいですが、切断や破砕作業においてはアスベストが⾶散する可能性があります。
⽔や薬剤を散布するなど湿潤化したうえでの⼿壊しが基本で、作業者は適切な作業着や防塵マスクを装着します。作業場の隔離や前室の設置、届出は不要です。
レベル3の建材は、2004年まで使⽤されていました。
- 主な建材:屋根材、外壁材、内装材
- 主な使⽤箇所:建築物の屋根や外壁、天井、床
6.アスベスト事前調査の義務化
アスベストが使⽤されている建物を解体する際、そのまま⼯事をしてしまうとアスベストが⾶散し、⼯事関係者だけではなく、近隣にも⾶散する可能性が⾼くなります。
そのため、⼯事対象となる建物などにアスベスト含有建材が使⽤されているかどうか、適切に把握しておくことが重要となります。
2022年より、建築物などの解体‧改修⼯事を⾏う施⼯業者は、⼯事の規模や請負⾦額に関わらず、アスベストの事前調査が義務付けられました。
また、⼀定規模の解体‧改修⼯事では、アスベストの事前調査結果を報告する必要があります。
アスベスト事前調査結果の報告が必要となる建築⼯事
- 解体する場所の床⾯積が80平⽅メートル以上の⼯事
- 請負代⾦の合計額が税込みで100万円以上の建築物の解体‧補修⼯事
7.アスベスト関連の資格を有する解体⼯事会社を選びましょう
2023年、事前調査の信頼性確保のため、アスベスト事前調査を⾏う者の資格要件が定められました。
アスベスト事前調査には、「特定建築物⽯綿含有建材調査者」や「⼀般建築物⽯綿含有建材調査者」の資格保有が必要です。
また、アスベスト除去⼯事の現場作業には、安全に作業ができるように「⽯綿作業主任者」の資格者が必要になります。
全ての解体⼯事会社が資格を保有しているとは限りません。
アスベスト事前調査から解体⼯事まで、⼀貫して⾃社で対応可能かについて、解体⼯事会社を選ぶ基準の⼀つにすることをおすすめします。